R18 このオレンジが!

 ぱちりと目が覚めたジェレミアは天井を見つめた。見覚えがないようであるような気がする。自室ではないようだが、とそこまで考えて数秒後、ようやくここがゼロの私室だということに気づいた。
 左を向くと、ぐっすりと眠るルルーシュの顔が間近にあった。起きて早々に主君の寝顔が見られるだなんて、と一人でジェレミアは幸せに浸る。小さな寝息を立てて眠るルルーシュの表情は常より幼く見えて、それが更にジェレミアの胸をきゅんとさせた。
 じっとルルーシュを見つめていると、薄っすらと無防備にも開かれた唇が気になった。いつもならきつく引き結ばれている唇が、今は誘うように開かれている。これはもしや、本当に誘われているのだろうか。
 じりじりとにじり寄ってみると、更にルルーシュの顔が近くなる。ルルーシュが起きている時ではこんな風にまじまじと見ることなど出来ないので、ジェレミアはここぞとばかりに観察した。
 そうやって暫くの間眺めていると、色々と堪らなくなってきた。ルルーシュを起こさないように、そっと手袋をつけたままの左手を伸ばす。頬を指で辿れば、ふるりとルルーシュの睫毛が揺れた。起こしてしまったのかと焦ったジェレミアだったが、ルルーシュの瞳が開かれることはなく、安堵する。
 そのまま頬を伝い、開かれた唇へと辿り着く。人差し指でつつ、となぞると、更にルルーシュの睫毛が震える。迷った後に、ほんの少しだけジェレミアは指を入れてみた。舌に触れると、ルルーシュの眉間に皺が寄る。どきどきしながら指をそのままにしていたら、ルルーシュにちゅう、と指を吸われた。
(る、るるる、ルルーシュ様……っ!?)
 あまりの出来事にジェレミアの思考が停止する。その間もルルーシュはジェレミアの指先に吸い付いたままだ。唾液によってじわりと手袋が湿っていく。まさか起きているのでは、と思ったがそうではないようだった。
 ルルーシュに指を吸われていると思うと、一気に下半身に血が集まる。むくむくと元気になる自身にどうしたものかと悩んだのは一瞬のことだった。我慢は体に悪いことなのだ、と自分自身に言い聞かせたジェレミアは、左手をルルーシュの口に突っ込んだまま自由な右手をごそごそと下半身へ伸ばした。吸われたままの指先に加え、寝ているルルーシュに対してこのような行為をしているという背徳感がジェレミアを昂らせていく。
「っ……はぁ」
 上下に自身を擦り上げながらジェレミアは耐えるように息を吐く。先走りが溢れてくるのを手助けに、ただひたすら快楽を追い求めていく。
 そのとき、ふとある考えがよぎった。ルルーシュ本人が目の前にいるのに、見ているだけというのはどうなのだろうかと。
 ジェレミアは一度しごくのをやめ、吸われていた手を名残惜しくもルルーシュの口から引き抜いた後、体を起こす。そして、今までルルーシュと共に被っていた毛布を肩からずらした。現れたのは裸で眠るルルーシュで、ジェレミアは生唾を飲み込む。昨晩の情事の跡が残るルルーシュの体に、どうしようもなく興奮した。
 ジェレミアの脳裏に、忠義や忠誠、騎士道といった単語が飛び交う。どれもがジェレミアの中で重んじられていたものだったが、最終的にはルルーシュ様の裸、という事実が勝った。どこかで聞いた覚えのある、据え膳食わぬは何とやらだ。実際ルルーシュはただ寝ているだけで誘ってるわけではないのだが、ジェレミアは色々なものに蓋をした。
 ルルーシュの下半身に手を伸ばし、後孔を探る。つぷっ、と指を挿し入れると案外すんなりと入っていった。
「ぅん……」
 寝ながらにしてきゅう、と指を締め付けて声を漏らすルルーシュ様はなんていやらしいのだろう、と本人が聞いたら怒られそうなことを思いながら抜き差しをして中を弄っていると、知らずジェレミアの息は荒くなる。
 我慢の限界に達したジェレミアはルルーシュの足を開かせて、その間に割り込んだ。
「ん……、じぇれ、ミア……?」
「で、殿下!? も、申し訳ありません……っ!」
 ようやく寝ている間に好き勝手されていたルルーシュが目を覚ます。だが、ジェレミアは止まることが出来なかった。ルルーシュが半分まだ寝ているのをいいことに、そのままぐいっと自身を押し込める。
「!? ひっ、ああっ!」
 何がなんだか分からないままにジェレミアが中に入ってきて、ルルーシュは声を上げた。
「あっ、う、何……っ!?」
 ジェレミアが腰をしっかりと押さえているため逃げることも叶わず、圧迫感にルルーシュは喘ぐしかない。加えて起きぬけのせいで状況が理解できない。ジェレミアに揺さぶれながら、ルルーシュはフル回転で頭を働かせた。そして辿り着いた答えは、寝込みを襲われたのだという単純なものだった。
「このっ……! うあっ、ひう……っ!」
 ジェレミアに文句のひとつでも言ってやろうと口を開いたものの、前立腺を突き上げられて言葉にならない。強烈な快感に呑まれ、ルルーシュは図らずも勃ち上がってしまった。
「ふ、あうっ、あっ……!」
 ジェレミアが腰を打ち付ける度に、ルルーシュの口からは断続的に喘ぎが漏れ白い喉を仰け反らせる。屹立した先端からは先走りが零れては伝っていった。
「ルルーシュ様ぁ!」
「ふあっああ……っ!」
 抉るように再度前立腺を突き上げられたルルーシュは、耐えられず体を震わせて射精した。それに合わせてジェレミアも締め付けられ、同じくルルーシュの中で吐き出した。
 
「このオレンジが! 寝ている主に手を出すだなんて貴様は一体何を考えているんだ!? ああ、何も考えていないんだな? だからこのような無体が働けるということか、なるほどな」
「……」
 全てが終わった後、ルルーシュにベッドから蹴り落とされたジェレミアは床に膝をついて小さくなっていた。何も言えず、主君がベッドの上から罵声を浴びせ続けるのを黙って聞くしかない。
 欲望を吐き出して冷静さを取り戻した時には既に遅かった。自身がしでかした事実に、ジェレミアの顔から血の気がさあっとひいたかと思ったら、腹にルルーシュの蹴りが入った。あまり痛くはなかったものの、急な衝撃にベッドから転げ落ちて今に至る。
 散々ジェレミアを罵倒したルルーシュは、最後に枕を投げつけた。ぼすっ、と音をたててジェレミアの頭に当たった枕は力なく床に落ちる。ジェレミアはその間も微動だにせず床を見つめていた。ルルーシュが黙ってしまったため、沈黙がやけに重かった。
「ジェレミア」
 ようやくルルーシュに名を呼ばれたジェレミアは、恐る恐る顔を上げた。全面的に自分が悪いので、どのような罰でも受けるつもりだったが、やはり激昂する主君を見るのは怖かった。
「……で、殿下……」
 すっかり怯えているジェレミアに、ルルーシュはぶっきらぼうな口調で言い放つ。
「シャワーが浴びたい。連れて行け」
「……!? い、いえすゆあまじぇすてぃ!」
 ルルーシュに与えられた命にジェレミアは全力で食いついた。先ほどまでのうなだれっぷりが今は見る影もなく、意気込んでいる。ジェレミアのせいで自力で立つことが出来ないルルーシュは、むすっとしたままジェレミアの首に手を回しておとなしく抱きかかえられた。
「……この借りは必ず返すからな」
「何か仰いましたか殿下?」
 小さな声で呟かれた言葉が聞き取れず、ジェレミアは聞き返す。
「いや、何も」
 そう告げてジェレミアに向けたルルーシュの笑顔は、やけに綺麗だった。
2008/09/18
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